再生医療における脂肪幹細胞の役割
再生医療において、幹細胞(stem cell)は重要な役割を果たします。
再生医療とは、自分自身の体内に存在するstem cellを使用し、損傷した組織や器官を修復する最先端の医療のことです。
stem cellとは、分化する前の段階の細胞のことであり、様々な種類の細胞に分化する能力(多分化能)を有します。
また、自分と同じ細胞を複製する自己複製能があり、これらの能力によって、損傷した組織が修復されると考えられています。
stem celには生体の各組織に存在する体性幹細胞と受精卵から作られる胚性幹細胞、そして体細胞に特定の遺伝子を導入して樹立するiPS細胞に分類されます。
再生医療において実用が進んでいるのは、この中で体性幹細胞です。
体性幹細胞にもさまざまな種類があり、従来は骨髄幹細胞(骨髄由来の間葉系幹細胞)がしばしば使用されてきました。
近年、脂肪組織中に存在する脂肪幹細胞(脂肪組織由来幹細胞)が発見され、再生医療に使用されるようになりました。
脂肪幹細胞には、採取しやすく細胞数も多いという特徴があります。
脂肪幹細胞を用いて治療される疾患には、変形性関節症、乳房再建や心臓血管病、肝硬変などが挙げられます。
治療の方法は、まず患者様ご本人の脂肪を麻酔下で吸引し、吸引した脂肪から幹細胞を分離・濃縮・精製し、複数に分けて冷凍保存します。
必要に応じて幹細胞を解凍し、患部(変形性関節症の場合は関節)に投与することによって治療を行います。
採取した細胞を培養することによって、採取量を減らすことも可能です。